韓国人女性教授の韓流考察(1)ネットフリックスに利用されているのか?

今年(2021年)11月、韓国の3大地上波放送のひとつ、SBSが韓流研究者ホン・ソッキョン/ソウル大学教授(女 言論情報学科)にインタビューを行い、3回に分けてネットに記事をアップした。

今、絶好調の韓流について、なかなか興味深い分析をしているので、要約して紹介しよう。
第1回は「イカゲーム – ネットフリックスが韓国を利用しているのか?」

▼フランスから韓流について考え始める
ホン・ソッキョン教授は、フランスのボルドー大学在職中に韓流研究を始め、2013年からはソウル大学言論情報学科で教鞭をとっている。BTS現象を学術的に研究し、大衆の言葉で解いた「BTSの路上で」という本を出版した。

最近は、国内外からインタビューのリクエストが増え、日本でも若干保守的な40~50代の男性ビジネスマンが読む雑誌からも取材を受けたという。以前は韓流というと、40~50代の女性が涙を流しながら見ていた「冬のソナタ」のようなメロドラマが中心だったが、いまや事情が変わった。

韓流は2000年代初めに東アジアで起きた現象だった。ホン教授はその当時フランスにいた。外国から韓流現象を見ていた。

研究を始めたきっかけ。フランスのボルドー大学にいた時、学生たちが韓国文化についてサークル活動をしていた。最初は、韓国人留学生たちが主軸のサークルだと思った。昔、自分たちより上の世代のアメリカに留学した韓国の学生たちが韓国を懐かしみ、集まって韓国ドラマを見たりしていたように。 ところが違った。韓国の学生は一人もおらず、みんなフランス人の学生たちだった。ボルドー大学はパリやマルセイユ大学のように多文化的な所でない。それで興味が湧いてきた。

学生たちをインタビューし、自分も2009年か2010年頃から韓国ドラマを見始めた。韓国を離れてから見ていなかった数々のドラマ。2000年以降のを見て、本当に驚いた。韓国ドラマの質的な成長が見えたからだ。

韓国が最も強いのはロマンチックコメディだった。 しかし、最近は、「キングダム」や「イカゲーム」のようなものが全世界で人気を得るようになった。そこにはグローバルOTTであるネットフリックスの仲介があった。

▼韓流の発展段階
韓流の流れを見ると、初期には、韓流は東アジアで他国の放送局が韓国のプログラムの放送権を買って、自国の地上波や衛星放送で放映、そして、その国で人気を得るというかたちだった。放送局という制度的な「仲介者」が存在した。こういうビジネスが成り立つことに韓国の製作者たちは驚いた。当時は、韓国のプログラムを輸出用に作っていなかった。国内用だったけど、輸出もできるようになり、日本や中国でもヒットした。これが韓流の第1段階。

第2段階の韓流は、フランスで観察した。全世界のインターネットが高速化し、インターネット網が拡張し、国境なしにコンテンツが受容され、伝播できる環境が作られた。韓国のプログラムには競争力があった。それで、外国が自発的に受け入れるようになった。

この過程では、日本大衆文化の影響もあった。日本の漫画はとてもグローバルなジャンルだった。また、漫画を原作に、多くのドラマを日本は作っていた。そのドラマ群の中に韓国のドラマもあった。 それで日本のドラマを見ていた人たちが韓国ドラマも見るようになり、韓国ドラマは日本のドラマよりもっと面白いと思った人たちが韓国ドラマを見続けるようになった。

韓国のラブコメディを、西欧で、フランス人やドイツ人が見るというのは理解しがたかった。イタリアやスペインの人々が見るならともかく。フランスにいたので、なぜフランス人が韓国ドラマを見るのか、疑問を持って研究した。そして、韓国のコンテンツは当たるということを理解した。

第3段階。これはBTSが開いた。Kポップは最近、グローバルな人気を博しているが、それは「江南スタイル」以降。 それ以前にも「東方神起」のような人気グループもあったが、活動領域は東アジアに集中していた。ところが「江南スタイル」は SNSの力を発揮した。外国人には分からない韓国語で歌うこの歌が、全世界で人気を集めた。「江南スタイル」は、韓国に、世界に出て行く方法、メディア環境について教えてくれた。

BTSがグローバルカルチャーに進出する道を切り開いた。映画の道は別にあった。世界中の映画祭や劇場配給を通しての道。さらにグローバルOTT(動画コンテンツや音声通話などをインターネット経由で提供するサービス オーバー・ザ・トップ)、つまりネットフリックス、ディズニー、アマゾンなどが全世界に韓国のプログラムを定期的に納品できる道を開いた。

KポップでBTSがやっていたことをドラマや映画でネットフリックスがやっていると言える。

ネットフリックスは日本や中国にも開かれている。そんな中、なぜ、韓国のプログラムが特に成功したのか? この点については、いろいろな理由があるだろう。メディア市場の側面から見れば、理解しやすい。ネットフリックスは今、北米や欧州では市場が飽和状態だ。

ネットフリックスはどこで市場を拡大できるか? 南米やアフリカはもう少し待たなければならない。すると、莫大な中産層の人口が拡大しているアジアが最大の市場となる。ここで韓国は強者なのだ。それで、ネットフリックスの戦略上、韓国がとても重要になった。

ネットフリックスが韓国のプログラムが好きで、韓国を選んだというよりも、すでに市場構造がそういう状態だったので、韓国のものを活用しているということ。韓国は予想以上に、アジアだけでなく世界に通じるコンテンツをうまく作り出した。

「イカゲーム」みたいなものを作るとは考えられなかった。「キングダム」が出た時も、 すごく驚いた。世界でヒットするゾンビものは主に西欧で作られていた。だが、朝鮮ゾンビも可能だった。今の「イカゲーム」もそうだが、「人間授業」、「スイートホーム」、パンデミック期間中に流行った「生きている」など、ゾンビジャンル、ノワールジャンル、アクション物など、よく作っている。

▼韓国産のロマンス物は西欧で通用するのか?
そんな中、韓国が得意なロマンス物が北米や欧州などで、いつ多くの視聴者を得て人気を集めることができるようになるか、興味深く見ている。ロマンス物が北米や欧州で受容されるには、人種やジェンダーの面でアジアが今よりはるかに力を持ってこそ可能。多くの人々が自分の感情を投射できる人物を生み出すことができるようにならなければならない。

ハリウッド映画では、女性たちは男性たちに、男性たちは女性たちにセックスアピールができる。それだけ支配的な人種のイメージ、想像力、感受性を発揮しているということ。今、韓国も、そういうことがアジアでは可能だ。韓国のロマンス物は東アジアを超え、東欧、中東、インドなどでも徐々に人気が高まっている。

しかし、まだ「西欧」ではそんな気配はない。しかし、「西欧」にもファンがいるのは事実。西欧でも韓国男性はかっこいい、韓国女性はきれい、というふうに魅力を感じてこそ受け入れられる。ロマンス物はストーリーにも魅力がなければならないが、人物の魅力が非常に重要。これは、ハリウッドのスターたちを見れば分かる。

▼ネットフリックスに利用されているだけではないのか?
来年4月に行う予定の会議。タイトルは「ネットフリックスが韓流に乗ったのか、それともその逆か」(Is Netflix riding the Korean wave, or vice versa?)。

韓国内ではネットフリックスに利用されていると心配する方も多い。韓国内では製作費だけが上がり、私たちがお金を稼ぐのではなく、ネットフリックスに儲けを全部、持っていかれるということ。この部分は、改善の余地があると思う。

ネットフリックス以外のOTTが入ってきた時、以前のような条件で契約してはいけない。韓国に有利な契約をし、放送権を完全に売ってしまわず、こちらでリサイクルできるようにしなければならない。知的財産権の戦略をしっかり考えなければならない。

過去の韓国のプログラムも同じ。これまでに蓄積したプログラムをどのように活用するか、よく考える必要がある。すでに、韓国には東アジア市場で検証された多くのプログラムがある。例えば、ブラジル人は2011年に出た韓国ドラマを今見て感動している。最高の韓国ドラマだと言う。 これをうまく活用すべき。知的財産権、放送権を安くせず、放送権を一部売買する形式やリメイク形式にすることもできる。OTTを作って他のグローバルOTTと提携するなど、様々な創意あるアプローチをすべきだ。

「イカゲーム」の成功は、韓国はこれだけのことができるということを全世界に 証明した。これからは「私たちに良い提案を持ってこい。私たちが選ぶから」という態度で行くべき。国内競争をしすぎて価格を下げたりせず、もっと自信を持って契約を結んでほしい。

もう一つは、とにかく若い人たちを信じて、任せなければいけない。なんで上の人たち、自分たちが昔、考えたことで 今でもやろうとするのか分からない。「イカゲーム」で有名になったファン·ドンヒョク監督は今50歳。私が若い博士としてソウル大学の大学院で授業をしていた時に私の授業を受けたそうだ。おぼろげながら私も憶えている。苦労して映画を作ってきた。他の監督の中にも、 そういう方々が多いと思う。
(ホン教授の話の要約はここまで)

所々、韓国を感じさせる言い方があって、おもしろいのだが、言っていることはだいたい首肯できる。

日本も、もっともっと世界に出ていくべきだろう。特に実写のジャンルで。

私も「イカゲーム」はよくできていると思った。この作品は「カイジ人生逆転ゲーム」や「神さまの言うとおり」「ライアーゲーム」など、日本映画のパクリではないか、と批判されたりもした。それで、私もそれらの作品も見てみたのだが、パクリではないと思う。先行作品のアイディアをこの程度に使うのは、全然、問題ない。

経済的に追い詰められた人たちが、大金をかけてデスゲームに挑む。
「イカゲーム」は、そうして繰り広げられるゲームのスリルだけではなく、登場人物ひとりひとりの背景や人間ドラマの部分をよく描いていて、俳優の演技はもちろん、美術や音楽などの演出も優れており、デスゲーム系の中では出色の出来だと思う。

日本の「カイジ」などは、なんとも日本風というか、世界の最大公約数的な部分からは少々ずれており、「イカゲーム」のほうがそこにマッチしている。

日本のコンテンツ製作関係者にも、ぜひ、世界に通じる作品を作ってほしいものだ。
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