崔真実ミステリー(6)事実か妄想か、真相は永遠に闇の中

この連載の4話、日曜新聞(2002年11月)に掲載されたインタビューでの全鎔喆のこの発言。

A:「あの人」のためにやった。 「あの人」が車の中で女性問題や二重契約問題などを取り上げ、「ペ·ビョンスを殺してくれれば一生の恩に着る」と言った。

日曜新聞は、このとき、全はその人物の名を明かしたが、「まだ検証されていないうえ、当事者にとっては致命的なことであるため、紙面に記さない」と断っている。

続きを読む


崔真実ミステリー(5)「殺害をそそのかした人」

全鎔喆が子役として芸能活動をしていた頃から親交のあったハン·ミョングという映画監督がいる。彼は1996年、全鎔喆が収監されていた原州刑務所で面会し、その後、2003年にも全鎔喆と会った。日曜新聞のインタビュー記事が出た02年11月の後だった。

続きを読む


崔真実ミステリー(4)「あの人」のためにやった…

前回(3話)の最後のほうに、こう記した。

全鎔喆(チョン・ヨンチョル)は収監された後、一部の政治家や報道機関に対し、「真実を明らかにする」とする手紙を送り、一部メディアなどは刑務所内でのインタビューまで行った。94年12月以来8年間、多くのメディアに「無念なことがある」という曖昧な表現を記した手紙だけを送ってきた。2002年11月頃、記者に実名を挙げてその「残念なこと」の中身を刑務所内のインタビューを通じて話し始めた。02年11月18日に、春川地方検察庁原州支庁で、この点について取り調べを受けたこともある。

続きを読む


崔真実ミステリー(3)判決は無期も、減刑されて出所

1994年12月23日午後2時過ぎ、忠清北道陰城の高速道路出入り口で警察官が、全鎔喆(チョン・ヨンチョル)が乗っているとみられる車両を発見した。検問のため近寄ると、車は急発進。警察の車両も後を追う。約2時間の追跡の末、逃走車は忠清北道鎮川郡のあるマンションの駐車場で発見された。人は乗っていなかった。警察は周辺を徹底的に捜索した。午後6時半過ぎ、逃げられないと悟った全が警察に電話をして、自首すると伝えた。まもなく全は、車を駐車した場所に現れ、逮捕された。

逃走車に乗っていたのは全だけはなかった。共犯の金英敏と2人の若い女性もいた。女性たちは12日夜、全と金が訪れたソウル新村のクラブのホステスで高額のチップを受け取り、一緒に江原道のスキー場に遊びに行く途中だった。芸能界で働いた経験のある全鎔喆は、有名芸応人の名を挙げながら、2人の女性に「おまえたちも芸能界デビューさせてやるから」などと言って歓心を買っていた。

警察は、この2人の女性も隠れていた知人宅で逮捕した。犯人隠匿および逃走幇助容疑だった。金も翌24日、ソウル瑞草警察署で自首した。

続きを読む


崔真実ミステリー(2)動機はカネか、怨恨か

裵昺洙(ペ・ビョンス)は、崔真実と別れて1年ほど経ってから殺害された。殺害したのは全鎔喆(チョン・ヨンチョル 当時21)と、共犯の金英敏(キム・ヨンミン 当時23)。

全鎔喆は子役出身、92年の夏頃、MBCの収録現場で裵昺洙に会い、「芸能界で働きたい」と伝えた。裵は全の小柄な体格、柔和な顔立ち、善良そうに見える態度などを見て、女性の芸能人の担当に向いていると判断、崔真実のロードマネージャー(芸能人に同行して補佐し、車の運転から、連絡など、あらゆる雑用を担う下働き)とした。全は在職中、崔真実を「お姉さん」、彼女の母を「お母さん」と呼び、実の家族のように過ごしていたという。

続きを読む


崔真実ミステリー(1)殺害された大物マネージャー

私は1989年3月から96年5月まで、7年間、日本語教師をしながらソウルで暮らした。当時、韓国で最も人気のあった女優が崔真実だった。あの頃は毎日、彼女のテレビCMを見ていた記憶がある。この車のCMなどは目と耳に焼き付いていた。

私も、彼女のマネをして「タァ!」(乗りなよ)と車の運転席から車外の人に呼びかけたりしたものである。

この愛くるしい笑顔の崔真実が自殺したと日本で聞いたときはショックだった。さらに、その死をめぐっては、さまざまな噂が流れていた。いったい何が起きたのか? 何が彼女を死に追いやったのか?

続きを読む