映画「軍艦島」思いがけず大苦戦 「歴史を歪曲している」とネチズンが評点テロで逆風をあおる 

先月(7月)26日に公開された映画「軍艦島」。今夏最高の期待作として韓国で注目を集めていたが、「一週間天下」(●スポーツ朝鮮)に終わったという厳しい現実、評価にさらされている。

監督は、1300万人の観客を動員した「ベテラン」(2015年)を手がけたリュ・スンワン。俳優陣も、ファン・ジョンミン、ソン・ジュンギ、ソ・ジソブと今、勢いのあるスターぞろい。

制作費は260億ウォン(約26億円)と莫大。「鳴梁」(韓国では、16世紀末、豊臣秀吉の朝鮮出兵の時代、李舜臣率いる少数の朝鮮水軍が日本軍に勝利を収めた戦いとされている。もちろんこの戦いに対する日本の見方はまったく違う)と同じく「日本がらみの歴史物」という鉄板ネタ…。

これらの要素により、公開前から観客動員1000万は確実視され、1700万という歴代最高記録を打ち立てた「鳴梁」(2014年)を越え、2000万という途方もないレベルまで行くのでは、という予想もあったほどだった。

そして、公開初日、一日だけで97万人の観客を動員し、オープニングスコアの新記録を打ち立て、公開3日で200万、4日で300万、5日で400万と爆発的に観客を集めてきたのだったが、1週間で急速に勢いを失ってしまった。その後、8日で500万、12日で600万と進みはしたが、きのう(公開から14日、8月8日)の終了時点で、626万、きのう一日の観客数は8万4000人にまで低下した。

この状況では、採算ラインの700万突破は容易ではないと分析されている。(●ソウル経済

しかし、実態は、もっとずっと厳しいはす。採算ラインというのは単に合計の観客数だけで導き出されるのではなく、座席占有率も関係してくる。つまり、同じ観客数でも満員に近い状態で少ない上映回数によるものと、がらがらの状態でたくさんの上映回数によるものとでは、コストがまったく違う。

ちなみに、きのうの場合、8万4584人(観客数)÷3355回(上映回数)で、25.2。つまり上映1回当たり観客は25人だったということ。全座席数が不明なので、座席占有率は計算できないが、「今夏最高の期待作」の公開から14日目の数字としては、かなりさびしいもの、と言うしかないだろう。

採算ラインは700万ではなく800万という説もあり、興行的には、実は大失敗だった、という結果になるかもしれない。

では、失敗の理由だが、ソウル経済は、まず強力なライバル作品「タクシー運転士」(「軍艦島」より1週間遅れて公開。1980年5月に起きた光州事件を取材したドイツ人記者と彼を乗せたタクシー運転手の話。「国民俳優」ソン・ガンホ主演)の出現と、ネチズンによる、いわゆる評点テロを指摘している。

8月7日、ネイバー映画サイトによると、「軍艦島」と「タクシー運転士」の評論家の評点は10点満点で6.17点と6.1点で、ほとんど差がない。しかしネチズンと観客は「軍艦島」は5.15点と7.48点とした一方、「タクシー運転士」には9.09点、9.35点という高い点数を与えた。

特に「軍艦島」は公開当日、ネイバーのネチズンの評価に参加した人々の50%から1点をつけられるなど「評点テロ」を受けた。

また、「軍艦島」の場合はネチズンと観客の間の点数差が大きいのに対し「タクシー運転士」は、ネチズンと観覧客が似たような評価を下している。

この分析からすると、実際に映画を見た観客は「タクシー運転士」ではかなり高い評価を下し、「軍艦島」のほうは悪くはないがそこそこ、というレベルだった。が、「軍艦島」のほうは大衆から強いアンチの風を受けており、これが観客動員に大きく影響している、ということのようだ。

では、「軍艦島」は、なぜ、大衆から強いアンチの風を受けることになったのか…。

現地の報道を総合すると、これらの要素が浮かび上がってくる。

1)補助出演者(エキストラ)を劣悪な処遇をめぐるネットでの騒動
「軍艦島」の撮影に参加した一部の出演者が「制作サイドの扱いは強制徴用レベルだった」と暴露したことから騒動になった。

2)突然のソン・ジュンとギ・ソン・ヘギョの結婚発表
本来、結婚はめでたいことなのだが、この2人は「結婚しない」としておいて、突然、結婚すると発表したため、一部ネチズンの反発を買った。

3)歴代最悪のスクリーン独占
公開初日、全国2758のスクリーンのうち2027つのスクリーンを独占した。割合にすると、実に73%だ。初日一日の観客動員で新記録を打ち立てた理由、からくりでもある。

4)歴史の歪曲
韓国での歴史の歪曲は、もうひどすぎて呆れるしかない。

戦時下の徴兵、徴用は、どこの国でもいつの時代でもあったこと。大東亜戦争の時代、朝鮮人(当時は日本の国民だった)には1944年8月まで国民徴用令の適用が免除されていた。徴用が行われたのは、44年9月から45年8月の終戦までの11カ月、日本本土への朝鮮人徴用工の派遣は45年3月まで7カ月間にすぎない。徴用工には宿舎が用意され、報酬も支払われていた。

それで、徴用は貧しかった当時の朝鮮人の間では人気だった。これが、事実。もちろん迫害や虐待もなく(人の物を盗んだりして、ぶん殴られた、みたいなことはあったかもだが、これはイジメとかとは違うだろう)集団での大脱走など、まったく荒唐無稽の話。

が、ここでいう歴史の歪曲は、そういうことではなく、むしろ逆。

報道によると、こういうことらしい。

一部のネチズンらは朝鮮人が端島を脱出する「軍艦島」の話の中で、日本人より朝鮮人たちが悪く描かれるなど、日帝強占期の歴史が歪曲されたと主張した。
●OSEN

映画の中で、本当に「日本人より朝鮮人たちが悪く描かれ」ているのかは分からないが、たとえば、映画に登場する慰安婦を演じたイ・ジョンヒョンはインタビューでこう語っている。(●NEWS24

Q:映画に出演したきっかけは?
制作会社「外柔内剛」のカン・ヘジョン社長が直接、電話をくれた。それがすごくうれしかった。直ちに「やります」と答えた。著名な女優たちがその役を欲しがっていたのに、私にオファーをくださったことに本当に感謝した。その後、送っていただいたシナリオを読んだが、シナリオもとても良かった。

日本は悪く、韓国は無条件で正しいという見方ではない点が良かった。そういうふうに二分法的に描くだけなら、映画はずっと簡単にできたが、監督は、そういうことはせず、現実感を持って状況を描いた。その点は、リュ監督は本当に勇敢に描いたと思う。私が演じたマルニョンの場合、慰安婦被害者であるにもかかわらず、強い女性として描いてくださったことが特に良かった。

映画「軍艦島」のマルニョンなる慰安婦については、歴史家のシム・ヨンファンも「慰安婦の現実は『鬼郷』よりも『軍艦島』のほうがはるかに正確だ」と発言した。(その後、関連団体の抗議を受けて謝罪)(●ソウル新聞

これらの女優と歴史家の発言は正しいのだが、それゆえに、一部ネチズンの反発を買った。ネチズンたちは「鬼郷」のあのフィクションのほうをこそ、事実として信じたいのだ。
(ここで韓国らしく、すさまじく狂っているのは、これが来年(2018年)から韓国の中高で使用される国定歴史教科書に事実として記されること。「戦争に敗北し、逃亡する日本軍に集団殺害されたりもした」と。そんな話を裏付けるものはない。あえて言えば「鬼郷」が根拠。こんなことを国がやっているのだ!)
●産経

「軍艦島」が歴史を歪曲していると言って、ネチズンが騒ぎ、映画が興行的に苦戦することになった、その実態は、こういうことである。

まったく…、暗然とするしかないではないか!

参考)
■韓国2016/0306(日)の映画興行成績ベスト5 トンデモ映画「鬼郷」の大ヒットが続く恐るべき現実

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映画「軍艦島」思いがけず大苦戦 「歴史を歪曲している」とネチズンが評点テロで逆風をあおる 」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: 映画「軍艦島」は赤字確定 「タクシー運転士」が反射利益でウハウハ | ソウル人生劇場

  2. ピンバック: 「親日」という烙印を押された、映画「軍艦島」のリュ・スンワン監督夫妻に立ちふさがる「恐るべき現実」  | ソウル人生劇場

  3. コウイチさん 記事ありがとうございます。
    興味深く読ませて頂きました。韓国って愛国心をあおぐような映画ばかりで、、この軍艦島もPRから何から随分とお金をかけてましたよね。
    軍艦島が世界遺産になったのが、よほど気にいらなかったのでしょうかね。
    ソンジュンギが、反日感情MAXでインタビューに、後先考えず(笑)爽やかに応えていた時には、このような展開予想してなかったと思いますね。彼は最高の興行成績のプレゼントを受けて、結婚式とすすむはずだったと、、、、
    しかしながら、民意=ネチズンの声で、反日か親日なのか?真実を歪曲してるとか、いまや大騒ぎですよね。

    話は変わりますが、日韓合意にしろ、 結局、過去の同じ資料・同じ証言の聞き伝えで「正しい検証」が新しくされていない。
    解決すべき問題を日本が向き合っていないとしか考えてないのですね、韓国は。

    日本は日本で事実に基づいた問題については補償をして政治的解決をしてきたと思うのですが。韓国という国は暗いい部分、恨(ハン)の結束がないと生きられないのでしょうか。。

    海外へにも、とにかく軍艦島に纏わる諸説をからめて、興行してくのでしょうね、、あきらめずに、、

    • >海外へも、とにかく軍艦島に纏わる諸説をからめて、興行してくのでしょうね、、あきらめずに、、

      そのつもりだったはずですが、韓国内で興行が不振だったこと、史実に即して、朝鮮人が朝鮮人を管理しており、時には手荒なこともしていた、という…、韓国にとって恥ずかしい事実を描いていること、そのへんの事情からして、そんなに海外でのPRには使われないかも。

      慰安婦で言えば、女性をだましたり強制的に連れ去ったりしていたのは、朝鮮人の女衒だった、ということを史実に即して描く、というのと同じことだから。

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