少し遅くなりましたが、みなさま、新年おめでとうございます。
が、今年は、ぼくはあまりおめでたくなく、憂うつな気分です。
例年、正月は、時間をかけてお節料理を食べ、時々とっくりを傾けながら、録画しておいた映画やドラマを見たりして過ごすものなのですが、今年の正月は違いました。
年の瀬も押しつまった28日、慰安婦問題で日韓外相合意というビッグニュースが飛び込んできたため、これをどう見るか、今後はどうなるだろうかといろいろ情報を集めたり分析したりして過ごしました。
合意内容は、ここに記されています。
●外務省 日韓外相会談
http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001667.html
これの骨子は、日本政府がこの問題への旧日本軍の関与を認め「責任を痛感」し、安倍首相が「心からおわびと反省の気持ち」を表明。そして、元慰安婦支援のため、韓国政府が設立する財団に、日本政府が国の予算から10億円程度の資金を一括拠出する、ということ。
韓国側で反対している人たちは「法的責任」や「賠償」という言葉が明記されていない(文書化されなかったので「明言」されていない、というべきか)などとして反発していますが、そういう細かい表現の解釈は日韓以外では注目されず、要するに、日本が戦争中に韓国人女性を性奴隷にした罪を認め、謝罪し、賠償することにした、と理解されてしまうため、ものすごく無念な思いをかみしめております。
実際、この日韓の合意を欧米の主要メディアは、こういうタイトルで報道しました。
ABC
South Korea, Japan Reach Landmark Deal on WWII Sex Slaves
(韓国と日本、第二次世界大戦時の性奴隷問題で画期的合意)
http://abcnews.go.com/International/wireStory/south-korea-japan-settle-deal-wartime-korean-sex-35969853
BBC
Japan and South Korea have reached a historic deal to settle the issue of “comfort women” forced to work in Japanese brothels during World War Two.
(日本と韓国は、第二次世界大戦時に売春を強制された「慰安婦」を解決する歴史的合意に達する)
http://www.bbc.com/news/world-asia-35188135
CNN
Japan and South Korea have reached an agreement over the long-standing issue of “comfort women,” a term that describes sex slaves used by the Japanese military during World War II.
(日本と韓国は、積年の懸案だった「慰安婦」、すなわち第二次世界大戦時に日本軍によって使われた性奴隷の問題で合意する)
http://edition.cnn.com/2015/12/28/asia/south-korea-japan-comfort-women/
海外では、慰安婦(comfort women)=性奴隷(sex slaves)なのであり、それを日本が、ついに罪を認め、謝罪し、賠償することになった、と認識される結果となったのでした。
この問題は、最近約25年の間、韓国の政権が変わるたびに蒸し返されてきた「積年の懸案」ではあったのですが、実は、1965年の日韓基本条約に付随して交わされた日韓請求権協定により、はるか昔に「完全かつ最終的に」解決済みのもの。
そう思うと、まったく不当であり、10億円を国費から出すことにし、65年の請求権協定を(先人たちが「この線だけは譲らない」と懸命に守り続けてきたのに、今回、日本政府が)自ら破ってしまったために、将来に及ぶ悪影響も心配されますね。
一方、韓国のほうは、というと、元慰安婦や支援団体を中心に、この外相間の合意に納得せず、強く反発する動きがあります。
「法的責任」や「賠償」という言葉が明記されていない、元慰安婦の意思を無視した、韓国の外相がこれをもって「この問題は最終的かつ不可逆的に解決される」としたことなどが不満のようです。
そういう動きを受けて、青瓦台(韓国大統領府)は31日、このようなメッセージを国民に伝えました。
●青瓦台(大統領府)報道資料 No.1173 2015-12-31
日本軍慰安婦問題の合意に関連し、国民に捧げる言葉
http://www1.president.go.kr/news/newsList.php?srh%5Bview_mode%5D=detail&srh%5Bseq%5D=13624
ーー以下、全訳
国民の皆さん、政府は12月28日、慰安婦問題が公式に提起されて以来、実に24年間も解決できず、 韓日関係の最も困難な懸案問題となっていた慰安婦問題をめぐる交渉を妥結しました。
慰安婦問題はその傷がとても深いために、現実的にどのような結論が出たとしても、無念な思いは残ることでしょう。
過去の歴代政府は、慰安婦問題の解決に積極的に乗り出さず、ある時は慰安婦への賠償責任を問わないと言うなど、この問題は手をつけるのも難しく、最も大変な難題でした。
現政府も過去の政府のように、この問題の解決を先送りしていたならば、最近3年のような韓日関係の硬直も経験しなかったことでしょう。
それにもかかわらず、現政府は発足初期から慰安婦問題を解決するために韓日関係が硬直の一途をたどり、韓日関係の回復を望む国内外の声が上がる中でも慰安婦問題を解決するため、最後まで原則を固守してきました。
これまで日本政府に、慰安婦問題を解決することが韓日関係の回復のスタートラインであると幾度も指摘してきており、日本政府に絶えず問題を提起してきました。
それは慰安婦被害者の方々が平均年齢89歳の高齢のため、おひとりでも多く生存していらっしゃるときに心に残ったハン(恨)を解いてさしあげなければならないという思いからでした。
今年だけでも、9人の被害者のおばあさんたちが亡くなった状況で政府は慰安婦に対する日本政府の責任認定と公式的な反省、謝罪を引き出すために、あらゆる努力を尽くしました。
そして可能な範囲で十分な進展を成し遂げたという判断により合意をしました。
国民の皆さん、これから大切なことは、日本軍慰安婦被害者のための財団を早急に設立し、被害者のおばあさんたちの名誉と尊厳を回復して生活基盤を実現する具体的な措置をとることです。
しかし、今、事実と異なるデマが飛び交っています。
少女像(ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像。韓国では「平和の少女像」)撤去を前提に金を受け取ったとするなど、事実と全く異なる報道と社会混乱を惹起させるデマは慰安婦問題に、新たな傷として残ることでしょう。
今回の合意に対する民間団体のいくつかの批判も聞いています。
しかし、政府は、銃声のない戦場のような外交現場で韓国の国益を守るため、崖っぷちに立たされた気持ちで取り組んできました。
そのように政府が最善を尽くした結果について「無効」「受け入れられない」とのみ主張するなら、今後、どの政府も、このような複雑な問題には手を出さなくなるでしょうし、民間団体や一部の反対されている方々の主張に沿う合意を導き出すのは容易ではないでしょう。
実際、これまで民間レベルの多くの努力にもかかわらず慰安婦問題は一歩も進みませんでした。
それにもかかわらず、まるで政府が交渉を過ったかのように世論を形成していくことは、あまり残っていない慰安婦被害者のおばあさんたちの生涯に決して助けになりません。
それでもまだ、政府のこのような合意を受け入れることができず、困難の末に解決された慰安婦問題をまた原点に戻そうとおっしゃるのであれば、この問題は24年前の原点に戻ることになり、政府としてもおばあさんたちの生前に、これ以上、どうする余地もなくなるという点をお察しくださるようお願いいたします。
また、両国のマスコミも報道に慎重を期してください。
事実ではないことを報道して感情を煽るのは、両国関係の発展と、苦労して進捗させてきた問題の解決にまったく役に立ちません。
国民の皆さん、今、我々がするべきことは、これ以上韓日関係が硬直せず、日本政府が過去の歴史を直視して着実に合意を履行し、両国が一緒に未来に向かう重大な契機になれるようにすることです。
国民の皆さんと慰安婦被害者のおばあさんたちにおかれましては、大乗的なレベルで、今回の合意をご理解くださり、国家の未来をために力を結集してくださるようお願いいたします。
ーー終わり
「過去の歴代政府は、慰安婦問題の解決に積極的に乗り出さず、ある時は慰安婦への賠償責任を問わないと言う」
日本に「慰安婦への賠償責任を問わない」としたのは、キム・ヨンサム大統領(1927年12月20日 – 2015年11月22日 1993年から1998年まで、第14代大統領)でした。
昨年11月に亡くなったキム・ヨンサムの追悼特集で、ソウル新聞がこういう記事を出しています。
●ソウル新聞 2015-11-24 01:32
[キム・ヨンサム元大統領逝去]「慰安婦問題」対日道徳的優位を導く
http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=100&oid=081&aid=0002637867
この記事によると、こういうことです。
キム・ヨンサム政府は1993年3月に発足直後、「道徳的優位に立脚した救済措置」を宣言、被害者への金銭的補償は日本に要求せず、韓国政府が直接、行うという立場を明らかにした。
(政権が変わったことで)慰安婦問題が再び浮上し、金銭的要求をしてくるのではないかという疑念を持っていた日本では、キム・ヨンサム政府が予想していなかった発想の転換をしたため、日本内の良心勢力の反響を呼び起こす。
そして日本は1993年8月河野洋平官房長官(当時)が日本軍慰安婦動員の強制性を認めた「河野談話」を発表、1995年8月には植民支配を謝罪した「村山談話」が続いた。
93年というと、もう23年前のこと。
ふつうの国なら、これで終わっていたのではないかと思うのですが…。(この時、キム・ヨンサムが口にした「道徳的優位」がどうとかいうのは、国内向けの勝手な言い草で、どうでもいいこと。もともとこの時点で日本に戦争中の出来事について個人補償を求めることのできる根拠もなかったわけなので、それを確認したにすぎない)しかし、みなさんよくご存じのとおり、その後も、政権が変わるたびに、この問題は蒸し返されてきたわけです。(パク・クネ大統領は、キム・ヨンサム氏の4代後、18代大統領)
今回の合意で、日本にとって最も大きな収穫といえるのは、韓国の外相が「最終的かつ不可逆的に」解決することになると表明したこと、そして、それを受けて、ケリー国務長官が日韓が慰安婦の問題を「最終的かつ不可逆的に」解決することを明確にしたと評価する声明を発表するなど、米政府がお墨付きを与えたこと。
●FNN 12/29 06:26
「慰安婦問題」で日韓合意 アメリカは歓迎の声明を相次ぎ発表
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00312406.html
先に紹介したABC、BBC、CNNの報道なども、この問題を戦時中の日本軍の「性奴隷」と記しているのはとんでもないことで、日本人としては悔しい限りだが、「日韓が合意した」と大々的に報じたために、韓国政府としても、今後、再び蒸し返すのが難しくなった、ということはできるでしょう。
これからは、日本vs.韓国ではなく、韓国政府vs.元慰安婦、支援団体、マスコミ、韓国民という構図になります。
大統領就任直後から、反日全開で、国民を煽りに煽ったパク・クネ大統領。
これまでは背に受けて政権運営の推進力として利用してきた国内のこの非常に強い圧力を、今度は受け止める立場になって、果たして抑え込めるかどうか…。
これからも、この問題については推移を見守っていきたいと思っています。興味のある方はぜひお読みください。
ということで、今年(2016年)も「ソウル人生劇場」をよろしくお願いいたします。
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