(1) 突然かかってきた電話。衝撃的な事実
2012.11.27
황당한 ‘성폭행 보이스피싱’ 사건의 진실은
訳)荒唐無稽な「性的暴行ボイスフィッシング(電話詐欺)」事件の真実は
最近、ソウル新聞に掲載されたこの事件は、まさに「事実は小説より奇なり」なのではないかと思う。
事件の発端は、もう成人した息子から母親にかかってきた一本の電話だった。
「お母さん、ぼくは性機能不具だって。それも、すごく深刻なレベルで・・・。これからどうやって生きていけばいいんだろう?」
先月20日午前9時ごろ、京畿道竜仁で暮らす主婦Aさん(59)に、こんな息子からの切迫した電話がかかってきた。電話機から聞こえてくる息子の声は、大きなショックを受けて、まともに話せない状態だった。
「いったいどうしたっていうの? 今、どこ?」
Aさんの問いかけに、息子は「大変なことになった」ということばだけを残し、医師に代わった。そして「泌尿器科の医師」と自らを紹介した男(45) は、意外な話を切り出した。
「息子さんには現在、勃起不全による性機能障害があります。 病状はかなり深刻です」
びっくり仰天。
「どうしたらいいのですか」というAさんの問いに、医師だという男は、シリアスな口調で述べた。
「このごろは医学が発達しており、勃起不全はきちんと治療すれば治ります。薬物治療や注射、手術など、一般的な方法もありますが、それらは実は回復速度が遅く、効果のほども不確かでして・・・」
ことばの最後をぼかすように話した医師らしき男の態度に、Aさんは焦り、「もっと速く効果の確かな方法はないのですか」と尋ねた。
すると、男は「待ってました」とばかりにその方法を説明し出した。なんでも「母胎治療」というものだった。
この方法は、実の母親が性交を行うときに出す呻吟する声 (신음소리 いわゆる「あえぎ声」)を録音して息子に聞かせてあげるというものだった。
母親の力が必要だというこの「母胎治療」は常識的には荒唐無稽すぎて話にならないはずだが、気が動転していたAさんには是非を判断する余裕がなかった。彼女は羞恥を感じ、戸惑いもしたが、「お母さんが助けてあげてこそ効果があるのです」という男の丁重な提案(정중한 제안)に警戒心を緩めてしまった。
Aさんは瞬間的な葛藤はあったものの、結局、息子の治療のため、この提案を受け入れることにした。
1か月に3回、1回につき25万ウォン(約1万7500円)の治療費という条件も素直に承諾した。
(2) モーテルで待っていた「有名な医師」
2012.11.29
「この方法はややデリケートな面がありますので、病院の中では行えません。明朝、わたしが指定する場所に来てください」
男は「内密な相談が必要だ」と言い、会う時間と場所を伝えて電話を切った。
翌日の午前、Aさんが、指定された竜仁市内のモーテル(ラブホテルみたいなところ)の部屋に入ると、見知らぬ男がひとりで待っていた。息子が電話を代わる際「有名な医師」と言った人物だった。
「まずはこちらにお座りください。録音を始める前に、ひとつ注意事項をご説明いたします」
男はことを開始する前に「注意事項」を話したとのことだが、これまた奇妙なものだった。
「息子さんがこの事実を知っては絶対にいけません。精神的な部分が最も重要な治療なので」
こうして口止めしてから、男は「実際のような声」を出すためと、Aさんに肉体的な接触を始めた。ただ「呻吟する声」を録音するためだと思っていたAさんは当惑したが、「息子のため」という半強制的な懐柔に、結局、体を許してしまった。
ことが終わると、男はAさんに1回分の治療費として25万ウォンを支払わせ、「治療」は終わった。
(3) 息子に電話して、だまされたことを知る
2012.12.01
その後、帰宅したAさんは、こみあげてくる後悔の念に苦しみ、ついには男との「約束」を破って、息子に電話をした。
「おまえのためを思って我慢しようとしたが、どうしても無理だわ。他の病院で治療を受けよう」
息子のことばは意外だった。息子は、この事実をまったく知らなかったのだ。
さらに性不具判定も受けておらず、母親に電話もしていないとのことだった。
ここで、ようやく男にだまされて、被害にあったことを知ったAさんは、すぐに警察に通報した。通報を受けた警察は、男をモーテルに誘引して逮捕した。
逮捕された男は、著名な泌尿器科の医師などではなく、平凡な食料雑貨店の主人だった。
男は自分の携帯電話から、不特定多数の相手にいたずら電話かけまくり、中年女性のAさんが電話に出たとき、このような「猟奇的な行動」をしたのだった。
(4) 過去に4人もの中年女性が同じ被害に
2012.12.04
さて、息子と医師の声を自在に代えて話した男の演技力は、即興で行ったものとは思えぬ精巧なものだったという。要するに、細部までしっかり詰めて、よく練習して本番に臨んでいたのだ。
さらに、男はこれまでにも同様の方法で、つまり女性たちの「呻吟する声」を録音して捕まった前科があった。取調べ過程で、男は2000年 11月にも無作為に電話をかけ、中年女性4人の「声」を録音し、懲役8か月、執行猶予2年の宣告を受けていたことがわかった。
警察関係者は、「男は電話での声をわざと小さくし、泣いているかのような声を出して被害者をだましていた。被害者の母性愛を悪用した巧妙な手口だった」と述べた。
中年女性の「呻吟する声」を集めるという自己の非正常的な性趣向を満足させたのみならず、 女性たちの心に消し去ることのできない傷を残した犯行の動機について、男はこう話したという。
“그냥 스트레스를 풀려고 아무한테나 전화를 걸었어요. 저도 (A씨가) 너무 잘 속아 넘어와 놀랐다니까요.”
訳)「ただストレス解消のため、誰彼かまわず電話しました。私も(Aさんが)あまりにも易々とだまされてしまったことに驚いているんです」
遊び感覚だね。他人事のような言い草にも聞こえる。
それにしても、と思うのだが、この類いまれな「演技力」、これをもっとほかの場で生かすことはできなかったのだろうか…。
また12年前にも同様の方法で、中年女性4人の「声」を録音し、懲役8か月、執行猶予2年の宣告を受けていた、というのにも驚かされる。
やはり、この男にとっては、この「遊び」がおもしろくてたまらず、「味」が忘れられず、繰り返したということであり、おそらく今回は実刑をくらうだろうが、出所してしばらくしたら、またやる可能性が高い。
それから、Aさんだけでなく、過去に4人もの中年女性が同じ被害にあっていた、というのも驚きだ。
男はいったいどういう口上で、この荒唐無稽な方法を、中年女性たちに納得させたのだろうか…。
(5) 奇妙な「おれおれ詐欺」
2012.12.07
さて記事では、男の「母胎治療」に関する口上については詳らかではないが、それ自体はたいして意味がない、つまり理屈ではなかったと思う。理屈であれば、とてもじゃないが、合理的な説明は無理ですよ。
私が自分の体験も振り返って考えてみるに、女性に対しては理屈をこねてもあまり意味をなさないことが多い。理屈こねるよりは、ひたすら感情に訴えたほうがよくわかってもらえる。(まぁ、「わかる」というか、こちらの希望を「受け入れてもらえる」ということだろうが)
「息子さんには、お母さんの…、
お母さんの助けが必要なんです!」
男にこれを繰り返し、切々と聞かされたAさんは、もう盲目になるしかなかったのではないか、さらに「息子」の涙声まで聞かされたんでは、もう居ても立ってもいられなくなったんじゃないかと思う。
それにしても、この不埒な男はとんでもないね。そういう純な母情をもてあそんで。
ここはぜひきちっと実刑にして、懲らしめてほしい、そう強く思うのでありますが、もうひとつ不可解なのは、やはりこの男の心理だ。
若い男の詐欺師と家を守る中高年女性の組み合わせ。これは典型的な「おれおれ詐欺」ですよね。そこはわかるんだが、通常、この種の犯罪は金が目的のはず。それしか目的はないと思うんだよ、ふつうは…。
しかし、このケースでは奪った金はじつに少額で、付随的、主たる目的は「身体」だよね。それも単に性交するだけはなく、「呻吟する声」を録音するというマニアックなもの。あとで録音をひとりで聴きながら、せんずりこいたりするんだろうなあ。
記事では「非正常的な性趣向」となっているが、ここがわからないのですよ。
やや不謹慎な言い方を許していただきたいのだが、率直に言わしてもらって、59歳のふつうの中高年女性を相手にそんなことをしたいものなのだろうか…。男は45歳、自分よりだいぶ年上だ。同じ年上でも、25歳の男が39歳の女性に、というのではないもんなあ。
やはり、どうにも屈折した心理が秘められているみたいだ。男の幼少期の母親との関係などを調べてみないと…。が、ま、とにかく常人には理解不能の領域にあるというべきだろう。
それから、トハナ(もうひとつ)非常に気になることがある。
この男は独身か妻帯者か、記事では不明だが、食料雑貨店経営。こういう店を韓国では「シュポマーケス」という。日本式に読むと「スーパーマーケット」だ。そんなことはいいとして、食料雑貨店の運営はふつう家族ぐるみである。男がひとりでできるものではない。通常、商品の仕入れ搬入とか陳列とか力仕事はとうちゃんがやって、レジや接客はおかあちゃんというパターンが多い。中華料理屋で奥の厨房でおっさんが鍋振って料理をこしらえ、それを運んだり、代金を受け取ったりするのをおばさんが担当するのと似ている。
とすると、妻がいる可能性が高い。
となると、う~む、犠牲者はAさん以外にもうひとりいるとみるべきだろう。
この男の妻も、事件によって、そうとうに深く傷ついたのではいだろうか…。
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