(1)義務警察が大人気、その理由は?
2014.09.09
徴兵制の韓国で、今、入隊する若者たちに義務警察が大人気だという。
●朝鮮日報
倍率アップ、義務警察試験…殴打がなくなって人気爆発
義務警察創設32年で初めて20対1、史上最高の競争率が続く
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2014/09/03/2014090300349.html
義務警察というのは、陸・海・空軍、海兵隊といった軍に入隊するのではなく、
転換服務要員として、警察で働く組織のこと。警察業務の補助をする補助警察と、
機動隊業務をする戦闘警察がある。海洋警察や消防にも転換服務要員はある。
志願者が増え続け、今、20倍もの競争率に達しており、大学街では受験のための
勉強会も行われ、志願者には1浪、2浪はざら、9浪などもいるという。
(試験は、毎月実施される)
試験は、筆記、性格検査、身体・体力検査の順で行われる。競争が激しくなった結果、
たとえば体力検査で、立ち幅跳びのカットラインが160センチから180センチに引き上げられたりしているという。
警察は、殴打・苛酷行為が急減したことを義務警察のブームの原因と見ているという。
2011年、江原警察庁所属の戦闘警察6人が脱走し、苛酷行為を通報した事件が
きっかけだった。当時、警察庁は問題を起こした4部隊を解体、治安監(地方警察庁長級)が「絶対に身の安全を守るから、苛酷行為について全部話してほしい」と将兵の相談に直接応じるようにした。
すると、同年1.7対1ほどだった義務警察の競争率が、翌年から急上昇、
昨年は8対1になった。
ソウルでも、義務警察の殴打・虐待行為は、2006年の106件から2010年は81件、
2012年20件と減り続け、昨年は8件、今年は7月現在まで2件にまで減った。
この現象を記事ではこう表現している。
義務警察の競争率は殴打件数と正確に反比例している。
以下、記事を翻訳してみよう。
ーー引用始まり
今年の競争率が新記録を続けていることについて、警察関係者たちは「28師団の
尹一等兵殴打死亡事件が決定的だった」と話す。実際、この日試験場で会った
志願者の大半は「尹一等兵の事件が志願のきっかけになった」と話した。
ユ・ウンソンさん(20)は「最初は義務警察を志願する考えはなかったが、尹一等兵の
事件を見て考えを変えた」と、キム・ジヒョンさんさん(22)は「28師団で上等兵として
服務中の友達が『尹一等兵事件のようなことは少なくない』と言ったので、
無条件で陸軍は避けなければならないと考えた」と志願理由を語った。
都市で勤務、外出できる機会が多く、自己啓発時間も持つことができるという
義務警察ならではの長所も競争率を後押しする要素に挙げられている。
ーー引用終わり
自分の身を守ろうとする韓国の若者たちの必死さが伝わってくる話ではないか。
私は、義務警察が「暴力絶滅」に意欲的に取り組み、成果を上げている理由としては、
一般国民との接触が多い職種だということもあるのではないかと思う。
記事によると、試験官が志願者に上半身や太ももを露わにさせてチェックすることも
しているという。
「市民に違和感を与える入れ墨が入っていないかどうか」を確認するのだとのこと。
(2)義務消防員の生活
2014.10.05
先日、徴兵制の韓国で、軍入隊の転換服務として義務警察に人気があるという記事を紹介した。
その際、この転換服務要員というのは、海洋警察や消防にもあることに触れた。そのひとつ、消防で働く義務消防員の現状をレポートした記事を見つけた。これも、ちょっと紹介しておこう。
●ソウル新聞 2014-10-04 02:52
私たちの職場が「蜜補職(おいしい仕事)? そうではありませんよ! 」
http://news.naver.com/main/ranking/read.nhn?mid=etc&sid1=111&rankingType=popular_day&oid=081&aid=0002468650&date=
20141004&type=1&rankingSeq=5&rankingSectionId=100
軍入隊を控えた若者たちの間で「蜜補職」(楽な軍生活を指す。「おいしい仕事」くらいの意味)と言われているところがある。1年11ヵ月間、小銃ではなく救急箱を持ち、軍用トラックではなく救急車や消防車に乗り、GOP(一般前線部隊)ではなく消防署で住民の安全を守るためにいつも出動待機している。軍入隊の代わりに消防署勤務を志願した義務消防員。彼らにとって、この頃、問題の多い軍の暴力はよそ事だ。義務消防員の世界を覗いてみた。
今月1日、京畿抱川消防署に配属された第44期義務消防隊ハン・ドンス隊員(23)は、今年3月の試験で4段階の選考と5.5対1の倍率を勝ち抜いた。軍人階級でいうと二等兵(消防階級では二防)になったばかり。
(略)
★消防学校では、毎日、体力強化訓練が 1~2時間
「消防学校で訓練を受けた時を思うと、今、不平不満は言えません。起床するとすぐ、10分で着替えて運動場に集合しなければならない朝の点呼は、今振り返っても、気が遠くなりそうです」
ハン隊員は、先日まで消防訓練を受けていた忠清南道天安の中央消防学校の話を切り出されると、手を横に振った。「蜜補職」を期待していたら、厳しくしごかれ、大変だったという。午前6時に起床ベルが鳴り、10分に点呼が始まる。その前に寝具を片づけて服を着なければならない。
ハン隊員は「毎朝、戦争をしている気分だった」と言って、そっと微笑んだ。消防学校の朝の点呼が厳しく行われる理由はいつ、どこでも、出動がかかれば直ちに出動の準備ができる、しっかりした心構えと態度を義務消防員に植えつけるためだ。
点呼と食事の後、午前8時から10時の間は、消防学校運動場には悲鳴が響き渡る。義務消防員の訓練兵たちは嘔吐とめまい、体力の枯渇、筋肉のけいれんを伴う訓練を受ける。患者を担架に移して、重い装備を運んだりしなければならない義務消防員の任務の特性上、強い体力は必須であるため、恐怖の体力強化訓練は1日1~2時間ずつ欠かさず行われる。消防の体力強化訓練は陸軍に比べ、強度も回数も2倍以上だ。
消防学校では体力強化訓練、消防マナーなど基礎素養訓練とともに、消防装備の運搬と活用、鎮火訓練、ロープの結び方など救助装備の活用、心肺蘇生術、患者運搬など救急法、道徳教育まで消防署生活に必要な多様な教育と訓練を受ける。
★出動職のみ。救助作業時は責任感大きい
「消防署に配置されて1週間です。基礎的な業務に慣れ、教育を受けている段階のため、まだ出動はしていません。来週から勤務組に編成されて出動することになると、救急車や消防車に乗って現場に出て、出入りの統制や装備調達、担架を運んで患者を運んだりすることになると思っています。消防隊員をサポートするのが私の任務です」
中央消防学校第44期、義務消防員の中でも最も優秀な成績を収め、最優秀賞を受賞したハン隊員だが、まだ消防署生活に慣れていない。午前6時30分、起床ベルが鳴ると抱川消防署で勤務する4人の義務消防員が目を覚ます。
軍では連隊戦術訓練、大隊軍戦闘力測定、酷寒期の訓練、遊撃など、さまざまな訓練や警戒所勤務、除草作業、陣地工事等を行うが、義務消防員の日課も、軍の日課と同様にきつい。
義務消防員は2交代もしくは3交代で交代しながら出動当番を務める。出動職と行政職に分かれていた過去とは異なり、2012年からは、すべての義務消防員が出動職となり、いつも出動待機状態を維持していなければならなくなった。トイレで用を足していてもご飯を食べていても出動ベルが鳴ると、当番は直ちに出動しなければならないため、内務班には常に緊張感が漂っている。
「もし誤った措置を取ったり、きちんと救助作業を補助しなかったら、患者の命が危なくなる可能性もある」ということを念頭に現場に出動するので、消防署に戻った時には、いつもへとへとになっている。
ハン隊員は、「事故現場に行くのは怖くないか」という質問に、「頭蓋骨が陥没したり、皮膚が破れて骨が露わになっている患者、血まみれになった救助者はもちろん、死体を見たり室内に満ちた血のにおいで悪夢に悩まされることもあると聞いている」という言葉で返事を代わりとした。
★内務生活は家族の雰囲気…暴力ない
抱川消防署の場合、昨年基準で1日平均の火災出動が2.12件、救助出動3.87件、救急出動28.9件、蜂の巣の除去などの生活苦情関連の出動は3.2件だった。当番がない日には装備管理及び整備、訓練などで一日が過ぎる。義務消防員が行政業務をするのは原則的に禁止されている。
日課はハードだが、義務消防員の内務生活では殴打、暴行などの苛酷行為は見られない。期数当たり150~200人と、比較的少数を選抜するため、配置されたセンターや消防署に義務消防員は10人以上いない。おのずと家族のような雰囲気が作られる。交互に出動当番を務め、未明出動待機による慢性的な睡眠不足に備えて助け合う雰囲気も生まれている。
★救急法教育を受け、消防官への進路の選択が多い
「消防学校で聞いた講義のうち最も覚えているのが救急法です。救助者の状態が肉眼で見て死亡しているようでも心肺蘇生術を実施しなければならないという講師の一言からです。人の死亡は、医師だけが判断することができ、救助隊員は『生きている』または『生かすことができる』と考え、無条件、心肺蘇生術を実施しなければならないということでした」
ハン隊員は「救急法教育以後、死に対する消防官の姿勢に対して尊敬を抱くようになった」と言い、「義務消防員のうち、消防官を進路として考えていなかった者が、消防教育科の消防署での生活を経て消防官に対する魅力と憧れから進路を変えることもしばしばある。実際に消防署に来て生活してみると、普段は人の良い隣人のようであっても出動ベルが鳴ると目の色が変わり、別人になる消防官の姿に、改めてすごい人たちだと思った」と遠まわしに思いを語った。
――引用終わり
内務生活は家族の雰囲気で、暴力がない。
これが大きな魅力になっている。
軍内部での暴力や、「苛酷行為」と総称されるさまざまな虐待、「愛の罰」は、まっぴらご免。
仕事や訓練はきつくても、やはり暴力よりはまし、ということ。
それにしても、ここにたどりつくのに5.5対1の競争率か…。
韓国の若者は大学入試や就職も大変だが、ここでも厳しい競争を迫られている。
ほんとうに韓国は大変な競争社会だと、あらためて思わざるを得ない。
尹一等兵殴打死亡事件について興味のある方は、この記事をお読みください。
■軍で続く暴行死
http://seouljinseigekijo.com/?page_id=286
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